海外での資産運用先としてシンガポールが選ばれる理由
タイやインドネシアなどのアジア諸国で、駐在など現地居住をされている日本人からも、資産運用はシンガポールで行うというご相談を受けることもあります。
世界中から投資マネーを呼び寄せるために国家が主導して資産運用をする時のメリットがでるよう、システムが様々に構築されています。そのことを、データや指標などから解説します。
1. データから見る最強のスマートシティー
オフショア投資先ランキング
シンガポールは日本の富裕層が好む海外オフショア(税金が優遇される場所)の投資先として、ニューヨークに次いで人気が高いです。
最近の調査では、
- 1位 ニューヨーク(35.8%)
- 2位 シンガポール(15.5%)
- 3位 ロンドン(12.5%)
の順となっています。(Capgemini「Asia-Pacific Wealth Report_2017」)

世界競争力ランキング
スイスの有力ビジネススクールIMDによる2020年版「世界競争力ランキング」では、
- 1位 シンガポール
- 2位 デンマーク
- 3位 スイス
- 4位 オランダ
- 5位 香港
- 6位 スウェーデン
- 34位 日本
となりました。
シンガポールは2年連続1位で健全な財政や雇用、企業の高い生産性などが評価されています。香港に関しては反政府デモの影響などで2位から順位を落とし、富裕層や投資家をひきつけていた地位が揺らいでいます。日本はビジネスの効率性をめぐる評価が低く、企業環境や国際経験は分野別で最下位となります。
働きたい国ランキング
「各国の駐在員が働きたい国ランキング」(英国・金融大手HSBCホールディングス調査)
- 1位 スイス
- 2位 シンガポール
- 3位 カナダ
- 4位 スペイン
- 5位 ニュージーランド
- 6位 オーストラリア
- 32位 日本
シンガポールは人口が約560万人と少ないながら世界中から優秀な人材を惹きつけています。
都市の安全性
また、シンガポールは日本並みに安全な国です。英国・エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した「世界の都市安全性指数ランキング」では、
- 1位 東京
- 2位 シンガポール
- 3位 大阪
でした。この調査は世界の主要60都市を対象に、57の指標を「サイバーセキュリティ」「医療・健康環境の安全性」「インフラの安全性」「個人の安全性」の4分野に分けて分析したものになります。
英保険組織のロイズが、ケンブリッジ大学と共同で行っている都市リスクの指標では、紛争や災害の脅威を試算していますが、東京が第1位、大阪が第6位となっています 。これに対してシンガポールは自然災害のリスクは非常に低く、考えられるリスクは金融危機が一番大きなリスクとなります。
2. 金融機関と通貨の安全性が高い

ソブリン格付け
シンガポール共和国のソブリン格付けは「AAA」で安定的です。
ソブリンの信用格付けが「AAA」の国は
- シンガポール
- スイス
- スウェーデン
- オーストラリア
- オランダ
- カナダ
- デンマーク
- ドイツ
- ノルウェー
- リヒテンシュタイン
- ルクセンブルク
など11カ国に限られています(S&P Global Ratings)。
日本の場合は、これらより2段階以上低い「A +」でアウトルックはポジティブですが、新型コロナの影響でアウトルックがネガティブに変わる懸念も出ています。
銀行の格付け
銀行に関しても、シンガポールの三大銀行 DBS、UOB、OCBC の格付けは「AA-」と日本のメガバンクより高格付けをつけています。
新型コロナの影響でフィッチが2020年4月に邦銀を格下げし、みずほFGとその子会社の存続性格付けは「BBB +」、MUFGと子会社は「A -」等へ引き下げられました。
また、シンガポールの保険会社であるグレートイースタンはシンガポール証券取引所に上場し、S&PでAA-と保険会社としては最高級の格付けです。日本生命はS&PでA+なのでその安全性が分かるでしょう。
通貨の安定性
シンガポールドルは、主要通貨に対して変動率がかなり抑えられた安全性の高い通貨です。
その理由の一つは通貨バスケット方式で複数の外貨に連動したレートを採用していることです。また、管理変動相場制によって変動幅が一定の枠内に収まるように管理しています。
シンガポールには政策金利は存在せず、政府が為替変動のコントロールを行っています。経済が貿易に大きく依存していて、物価の動きよりも、為替レートの動きのほうが景気に大きく影響するからです。好景気には為替相場が上昇しやすく、不景気のときは為替相場が下落しやすくなるように誘導しています。世界の金融センターの条件として、通貨の安定性は不可欠な要素になります。
通貨の流通量
通貨の流通量に関しては、対米ドルベースのシンガポールドルの取引高は世界10位です (2019年 国際決済銀行 (BIS) による世界の為替取引量調査)。
外為取引のハブとしても、英国、米国に次いで、アジアではトップとなっています。資産のメインは米ドルで運用をし、一部をローカル通貨であるシンガポールドルで運用したり、金や不動産などで資産保全をしている富裕層もいます。
マルチマネーアカウントも一般的で、ファンドなども米ドル、ローカル通貨、オーストラリアドルなど複数のラインナップから選ぶことも可能です。為替手数料や海外送金など各種手数料も一般に日本と比べると安いです。
国際的に開かれた金融で、デジタルにも力を入れているため、金融機関の利便性に関しては、スイスと共に非常に高いです。
ローカル銀行のアプリ等で為替取引や送金などの指示ができます。また、金融サービスだけにとどまらず、自動車の売買仲介、新電力の契約斡旋、不動産の売買仲介などワンストップで様々なサービスを提供できるように整えています。
金融サービスも全員一律ではなく、エコノミー、ビジネス、ファーストクラスと、顧客の預入残高に応じて受けられるサービスの質を変えています。また、ローカルバンクだけでなく、スイスなど欧州形のプライベートバンクやファミリーオフィスを始めとした数多くのEAM(エクスターナル・アセット・マネジメント)が集まるので、テーラーメイドの金融サービスを受けることができます。
富裕層の金融サービスやファミリーサービスを手がけるファミリーオフィスでは子供の願書のお手伝いからインターネット回線の設定まで移住周りのお手伝いをする場合もあります。金融だけではなく、生活周りの安心安全をサポートしてくれるのです。
3. 金融機関だけではなく、子供の教育など生活周りも充実
世界最高レベルの教育サービス
シンガポールが世界に誇るのは金融サービスだけではありません。子息の教育に関してもシンガポールの教育は世界最高レベルで、アジアの富裕層が子息の教育を求めてシンガポールに集まります。

シンガポールは驚異的な「高学力国」だからです。
15歳児を対象にした国際学力テスト(PISA 2015年)では、シンガポールが科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3分野すべてで世界首位です。ちなみに、日本は科学的リテラシー2位、読解力8位、数学的リテラシー5位と、日本と同等以上なのです。
ローカルの保育園や幼稚園でも幼少期から英語と中国語のバイリンガル教育は当たり前でAI時代に欠かせないプログロミング教育が充実している学校もあります。
また、東京23区と同程度の国土に20校以上のインター校があり、教育熱心な家庭が多いのでレベルは非常に高いです。インター校では3歳前後から18歳まで一貫して同じ環境で教育を受けることができます。語学教育は英語に加えて中国語やスペイン語などを第二言語として低年齢から学べる学校が多いです。
高度な医療
また、医療ツーリズムを受け入れているほどシンガポールの医療水準は高く、米国と比べると医療費も競争力があります。

銀行サービスと同じように、国民向けに公立の病院と、富裕層向けに自由診療の私立の病院とに分かれています。
病院のビルの中には専門医のクリニックが数多く入っており、例えば、乳がんや骨のスペシャリストが専門的な診断をしてくれます。日本と同等以上の医療サービスが受けられ、通訳もいるので安心をして受診をすることができます。医療保険も充実しており、キャッシュレスができる病院も多いので安心です。
シンガポールは総合力が高い
- ランキング
- 世界オフショア投資先ランキング 2位
- 世界競争力ランキング 1位
- 各国の駐在員が働きたい国ランキング 2位
- 世界の都市安全性指数ランキング 2位
- 格付け
- ソブリン格付け AAA
- シンガポール三大銀行の格付け AA-
- グレートイースタン(保険) AA-
- 通貨
- 主要通貨に対しての変動率がかなり抑えられていて安定している
- 対米ドルベース通貨流通量 世界10位
- 金融サービス
- デジタル化が進んでいる
- 国際的にも開かれている
- 富裕層向けテーラーメイドの金融サービスも充実
- 教育
- 世界最高レベル(15才児向けの国際学力テストで世界1位)
- 医療
- 高度先端医療が充実