fbpx
コラム

ジム・ロジャーズ新刊『世界大異変-現実を直視し、どう行動するか』から一部解説

ジム・ロジャーズ著『世界大異変-現実を直視し、どう行動するか』(東洋経済新報社))を上梓します。7/22発売ですが、一部の書店で12日頃から並び始めるようです。

世界大異変――現実を直視し、どう行動するか Tankobon Hardcover – July 22, 2022

2年以上にわたるコロナ渦とロシアによるウクライナへの侵攻によって、世界が不安に包まれており、食料やエネルギー価格は高騰を続け、日本でもガソリンや電気代が高騰し、電力も逼迫しています。

また、20年以上の長期にわたって上昇してきたアメリカの株式市場に対する不安も高まり、急激な円安に対する不安を感じている人も多いです。

そんな中、世界的投資家として知られ、主にお金の流れを読むことで数多くの予測を的中させてきたジム・ロジャーズ氏に2021年10月より2022年5月まで、数ヶ月に渡ってシンガポールの自宅にてインタビューを行いました。

コロナショック直後の2020年5月に刊行した前著『ジム・ロジャーズ 大予測』では、ラリー(再上昇相場)の到来、商品相場のさらなる上昇、仮想通貨への政府の規制、米国経済の陰り等を的中させるなど、世界経済やマーケットの潮流を的確に予測してきました。

ジム・ロジャーズ 大予測: 激変する世界の見方 Tankobon Hardcover – May 8, 2020

今後の世界の経済、金融、マーケット、そして社会はどうなるのか。また、ロシアによるウクライナ侵攻は、長期的な国際政治や地政学的動向にどう影響するのかを『世界大異変 ジム・ロジャーズ10年予測』にまとめました。

野球の試合にたとえると、最終回に入っている

コロナ危機後のラリーの行方はどうなるのかをジム・ロジャーズ氏に聞いたところ、「野球の試合にたとえると、最終回に入っている」という表現が非常に興味深かったです。

『ちなみに、ゲームのスタートは2009年〜2010年の秋の最安値付近で、それがバブルの初回イニングである。その頃、ほとんどの投資家は相場に失望をしていて、安値で株を損切りし、二度と株の話をしたくないという空気に包まれていた。

現在、このバブルは最終回に入っていると思う。もちろん同点になっていれば延長線に突入してしまうが、このブル相場にもゲームセットが近づいていることは間違いない。そして、バブル崩壊のサインはいろいろ見えている。

今まで投資をしたこともない新規参入者が「投資で儲けるのは簡単だ」と言い、SPACという特定買収目的会社があちらこちらに出てきている。SPACは百年以上前から存在しており、当時と呼び方は違っているものの同じ目的の会社の数が急増している。』

日本でも日銀の金融緩和から金余り状態で全く売上が立っていないような会社でもお金を借りることができる状態になっています。

また、日本は上場も比較的簡単にできるので、「こんな会社が」という会社も上場してしまっているのが現状です。

しかし、景気が悪くなり、貸し剥がしなどがあればこれらの会社の多くは吹き飛ぶでしょう。

個別株に投資をする際には十分に気を配りたいものです。また、スタートアップへの就職も今はよくても景気が悪くなると倒産などもあるのでリスクを承知の上で考えるべきでしょう。

実際に我が家もリーマン・ショックの時に外資とスタートアップで働いているカップルだったので、夫婦同時期に失業をしたのです。

ジム・ロジャーズ氏の教えとしては、歴史は韻を踏み、場所や時を変えて同じようなことが起こり続けるので歴史から学ぶべきということは根底にあります。

「今回は違う」ということはなく、私達人類は人間の本質などから逃れることはできないのです。

『ウクライナ以降は少し値を下げているが、テンセントやアマゾンなど連日上昇を続ける銘柄もバブル末期の典型だ。しかし、これはまだ完璧なバブルではない。なぜなら、すべての株が急騰しているわけではないからだ。バブルの最後にはすべての株が上がる。

そして、歯医者に行けば受付担当が株について話をしてくるし、タクシーに乗れば運転手が得意げに株で儲けた話をしてくる。もし、あなたの周りでそれが起きたら私に教えてほしい。これが、バブルの終わりを告げるサインだ。』

80年後半〜90年代初頭の日本のバブル景気を経験したことがある人にとっては完全なバブルは分かりやすいのかもしれません。ロジャーズ氏は日本の不動産もバブルになりかけているように見えると言います。

しかし、最近は女性誌でも投資や仮想通貨を取り上げたりするのでもうバブルの末期の状況まで進んでいるのかもしれません。

『また、ウクライナの状況が、予想を超えた新たなステージへ移行したり、次のパンデミックが始まれば、市場は再びパニックになる。さらには、誰もが知っているような世界的企業が倒産すれば、やはりパニックが引き起こされるだろう。

個人的には中国企業の倒産に注目しているが、こういったニュースが投資家を怖がらせ、怯えた投資家は「売り」にまわることになる。』

現在は非常に危うい綱渡りの状況で低格付けの企業や新興国の企業が震源地となって世界的な連鎖になる可能性もあります。

スリランカが破産宣言をしましたが、インフレは新興国・途上国、貧困層の経済を直撃します。

しかし、リーマン・ショックと違って、先進国の金融機関と家計が健全なためにすぐに大きなショックにはならずに小幅なリセッションに陥るリスクのほうが高いのかもしれません。

ウクライナ情勢が安定すれば、「Blowoff Rally」(急上昇相場)が起こる

しかし、投資をしている人にとって、極端に怯え過ぎるのではなく、チャンスを伺うことも重要です。

『ただ、相場はそう単純なものではなく、不安の中にあっても再度、上昇する機会をうかがっている。たとえば、ウクライナ情勢が早期に安定化するなどのサプライズが起これば、相場は上昇に向かうだろう。

その際の上昇相場は「Blowoff Rally」(ブロウオフ・ラリー)」と言われる急激な上昇になるかもしれない。Blowoff Rallyとは、まさに突風に吹き上げられるように株価が急上昇することで、ここをラストチャンスと見た投資家はいっせいに買いに走る可能性がある。』

現在、米連邦準備制度理事会(FRB)が段階的な利上げを行っており、株式市場が不安定に推移しています。しかし、その中でもこの急上昇相場を狙っている投資家も多く、大きく下げた後に大きく上げるのを繰り返しになっています。

この大きな下げに耐えられなくなって、ポジションを売ってしまう投資家もいます。

リーマン・ショックの際にも日経平均株価が7,000円の時に売ってしまう人もいました。後から振り返ると、本当はその時に買うべきだったのです。

株は下がり続ける時、数年間停滞をする時はありますが、一瞬の間に急上昇することも見られます。その波に乗るには日頃から投資を続け、どんな状況でもマーケットに参加している必要があるのです。

経済評論家でベストセラー作家の山崎元氏の見解も興味深く、良記事です。山崎氏も一旦売って買い戻すことは至難の業なので、保有して数年戻りを待つほうがよいと述べています。

株価の低迷はいつまで続くか、「株の死」は訪れるのかhttps://diamond.jp/articles/-/305951

ロジャーズ氏にも追加で取材したところ、ドル・コスト平均法はしばしば良い方法であることが証明されているということで、会社員の場合は毎月の収入の中から機械的に積立を継続するのはわるくないのです。

もちろん、投資をする上で自分が何をしているかをきちんと把握をしておく必要があるとロジャーズ氏は繰り返し言います。

本書で世界の動きをしっかりと学んだ上でビジネスや投資の機会を読者の方に掴んでいただければインタビューアーとしてこの上なく嬉しいことです。

テキストのコピーはできません。